デザイン経営のリスクについて逆にこの章で少し考えてみたいと思います。しかしその前にそもそもデザインというもの、それは何ぞやということがイマイチつかみどころもなくわからないという方が多くいらっしゃることと思います。
ふつうは製品やパッケージなどモノの柄や形や色やそれらを絵にするのがデザイナーであってその制作行為がデザインであるとほとんどの方は認識されていることと思います。それも事実その通りです。
しかしデザインとして目の当たりにするものは視覚的に見える化された表現の結果であって実のところデザインの本質はイマジネーションや発想にあるわけです。その発想やイマジネーションの無いものをデザイナーは実は絵にはできないのです。
そのデザインという行為の在り様を捉えて近年ではデザインシンキング、デザインイコール考える事という表現をしたりもします。デザインイコール発想することと広義に解釈しますと経営マネージメントも製品もサービスも宣伝広告も発想を必要とする作業そのすべてはデザインする行為となるわけであります。
そこをもっと掘り下げて考えますと以前のデザインマネージメントブログにも寄稿していますようにデザインイコール情報の組み合わせから生まれる成果物であり、その成果物がイコール発想となるわけです。3段論法的に表現しますとデザインイコール発想、発想を得るためには情報を集め組み合わせることが必要、その情報を得るためには情報をキャッチするそれなりの仕組みや個人であれば生活の姿勢や習慣が必要になるということになります。
その情報の組み合わせから新しい価値を発見発掘し創造が生まれるのですがその創造作業をAIがとって替わろうとしています。
さて話を戻してデザイン経営のリスクという視点で考察を進めます。デザイン経営にはどんなリスクが考えられるのか。このリスクを生む要因をシンプルにとらえますとデザイン・イマジネーションというものは常に発展的な素晴らしい理想と思える世界、哲学者プラトンの言うところのイデアを描くものです。その世界を描くものが経営トップであるとしたらそこにリスクも生まれるわけです。楽観的で発展的な素晴らしい理想を描いても現実とは違うというギャップが存在するというリスクです。
デザイン経営の失敗の多くはそこから生まれてきます。理想と現実のギャップです。その現実を客観的にとらえるクールな判断力を持って経営のかじを取る必要があるわけです。楽観的に発想・構想しても悲観的に計画することができなければデザイン経営は熱いだけの放漫経営ともなりイケイケどんどんで資金も底をつき破綻を招くことになってしまいます。
しかし一方でデザインを経営に持ち込み創造的な発想でもって事業を組み立てることができない企業にこれからの成長発展の機会を望むことはできません。なぜなら情報化デジタル社会への急激な環境変化に適応しイノベーションで新たな価値を創造し得る企業のみが成長の機会を手にすることができるからです。
それは言われて久しいハードからソフトへのシフトと理解すればわかりやすいと思います。ソフトイコールそれは発想でありデザインでありイノベーションを生み出す価値の源泉となるものだからなのです。
ソフトがハードを動かす時代にデザイン経営というビジョンを持てる事が企業経営に不可欠となるということです。
星野リゾート、ユニクロ、スノーピーク、もちろんGAFAと呼ばれるデジタル先進企業、成長著しいどの企業を取っても経営者はデザインを理解しデザインは経営資源の中核に位置付けられていることを見てもそれは明らかです。
2021-03-19 ©Ichiro Haba